Chillpresso 1 ~ dari bali ~

ミュージック・レヴュー by David Dobson (DJ David Hikari)

01.Supercozi featuring Lex empress  /Waltz On The Dusk Sand

 アルバムはSupercoziによるシネマティックでおだやかな6拍子ワルツで幕をあける。オランダ人女性シンガーLex Empressとアイルランド人女性バイオリニストSally Jo( 彼女が籍をおくサハラジャはバリ島をベースに世界的な活動を続けるワールド・ミュージック・バンド)をフューチャリングした作品だ。歌詞は Cozi がはじめての子供を産んだ時に体験した個人的メタモルフォシス(変容)を反映させたもの。レックスのなめらかな歌声とGus Tillの綿密なプロダクションは僕達を暖かで安心させるハーモニーに満ちた感覚へといざなってくれる。このあとに続くアルバムの音世界への完璧な招待状。エンニオ・モリコーネ(イタリアの巨匠作曲家)も誇りに思うだろう。

02System 7 vs Zen Lemonade/.Chill Dome Refugees / 

 エレクトロニック・ミュージックのパイオニアとして、また発明家として説明不要かつ絶大なリスペクトを集めるシステム7。その彼らとゼン・レモネード(レーベル主宰のSupercoziと夫 Gus Tillによるユニット)とのコラボレーションであるこの曲は、彼ら才能あふれる4人のアーティスト達の仕事と人生においてバリ島がどれだけ魔法のようかつ多次元な影響を与えたかを見事に捕えている。何年もの昔にシステム7を結成するというアイデアが産まれたのはバリ島であり、現在この島はゼン・レモネードとハイポ・スタジオにとってのホームでもある。2005 年11月、システム7がハイポ・スタジオを訪れたさいにこのミックスが産まれるべく種はまかれ、曲の変容はガスがシステム7の過去のアルバム”“Golden Section”の中の楽曲 “Sinom X Files”からガムラン・ループを取り出していじりはじめた所から始まった。そこに加えられたゼン風ダブベースラインが繊細かつ広大な空間バランスを創りだし、スティーブのトレードマークともいえる天上からのようなギターとミケットのシンセへと手渡されていく。その後Supercoziが更なるアレンジとサポートを加えた。最終的な結果はすべての音要素と4人のアーティスト達の持ち味が見事にシナジー化してブレンドされた内容となっている。

03. Hardcore Buddhist / Blue Planet Corporation

 アルバムはブルー・プラネット・コーポレーション(フランス/パリ・ベースのGabriel Masurel)の活気に満ちた、ジャズデリックでサンプル満載のこの曲によってギアを変える。狂想的なローズ・オルガンはエクスタティックなフルートに追いかけ回され、ガブリエルの生ドラムがうねってダイナミックなレース的雰囲気を盛り上げていき、それらが合わさって興奮とミステリーに満ちた生々しい雰囲気をつくりあげていく。

4. Sun Chaser  / Zen Lemonade

 アルバムはゼン・レモネードの送り出すグルーヴによってさらなるレベルへと押し上げられ、クルーズ・モードへとエンターする。プログレッシヴ・ハウスのモーニング・フィール、スペイシーなシンセとトリップ・ホップのファンキーさ、そしてサンプルの狂ったカットアップなどが混じり合い、我々に実に歯応えのいいコンビネーションを味あわせてくれる。キャンベル・ハピによる素晴らしいベース演奏に注目。

05. Catalyzer / Zen Lemonade vs Jules Evans featuring Rio Sidik

 ジュールス・エヴァンスはWestern Rebel AllianceやUnderwolves, またはMuki名義のバンド・メンバーとして、またプロデューサーとして数々の楽曲をリリースしてきた。彼とゼン・レモネードのコラボレーションになるこの曲は、ドラムン・ベースのリズムの閃き、リオ・シディック(彼もまたバリ島ベースのワールド・ミュージック・バンド、サハラジャのメンバー)によるソロ・トランペット、そしてSupercoziのシルキーかつスムースな歌声に伴われ、けだるい深夜のジャズ・フィールを僕らに感じさせてくれる。

06. Got To Get Ready / Brother Culture   

 ”本当に愛するにはどうやって準備したらいいんだい?” このレイドバックしていながらも究極的にファンキーな曲は君をその答えを探す旅にいざなうかもしれない。インスパイアに満ちた歌詞は、90年代よりダブヘッドやルーツ・ガーデン、そしてYouthなどといった面々とコラボおよびリリースしてきたラスタ/ダブMCブラザー・カルチャー(aka Kulcha B)によるもの。ダブ・ジュダーのベース、ファンキー・ゴングとティム・ヴァルカンバーグによるギター、そしてGus TillにYouthという才能をプロダクションに迎えてミックスした仕上がりは、とても愉快な驚きに満ちたものになっている。ブラザー・カルチャーのアルバムは今年リキッド・サウンド・レコードよりリリースの予定。

07. Red Sun Dub / Gus Till

 もし君がファット・ベースにハマってるなら、このGus Tillの曲がダントツおすすめだ。聴く者を吹っ飛ばしてくれるアティチュード満載の、なめらかにうねる地底からのベースライン。この曲はいわばアルバムの流れの中でピーク・ポイントに位置する作品だ。フリースタイルで華麗なキーボードと軽やかなパーカッションが絶妙な空間バランス、全体の構築性、自由さ、ファンキーさとグルーヴを創りだしている。ガスならではのグレートなプロダクションを再び堪能!

08. Lady Mint Tea / Supercozi

 さあ、ここでSupercozi が僕らをエキゾティックなラテンーモロッコ風ラウンジへ出かける旅へといざなってくれる。そこではSophie Digbyが官能的な声で僕らに囁きかける。Gus Tillによるファイナル・ミックスもスムースだ。

09. I Need Sunshine / Ionizer (Gus Till Remix) 

 Ionizerはコペンハーゲンをベースにおくデンマーク人プロデューサーIan Ion、サイケデリック・トランスのパイオニアKoxboxそしてSaiko-Podとしてとてもよく知られている存在だ。この曲では彼の以前のスタイルからの印象的なシフトを反映している。シンプルなスタートから、曲はゆっくりと徐々にビルドアップしてゆく。ガスとイアンが彼らの音楽活動初期に受けた影響はあきらかだー”太陽をくれ”とささやくヴォイコーダー・ヴォイス、シックでチルなクラフトワークへのオマージュ(たぶん)、そして漂うようなハービー・ハンコック的ピアノ。これらが合わさって瑞々しくも洗練されたハーモニーを形成し、聴く者を深い満足感とともに残す。良質にプロデュースされた音楽だ。

10. Aurora / Jong

 ジョング(ジョナサン・ガーニアー)はフランス/パリ出身のフレッシュなプロデューサーだ。グラフィック・デザイナーでもあり、フィルムなどへのサウンド・デザインを手がけていたという彼の経歴を聞けば、なぜ彼の音楽がすでにディープでアコースティックなサウンドスケープを十分に有しているのかが納得できる。この10分にもおよぶアジアン・チル・トラックは、インド歌唱、フルート、そしてパーカッションに優しく伴われ、暖かでピースフルでポジティブなアンビエンス、余韻をつくりだす。この素晴らしいコンピレーションをしめくくるのにまさにピッタリ。ジョングのデビュー・アルバムは今年ユースのリキッド・サウンド・レーベルよりリリース予定。